できもの(皮膚腫瘍)
「できもの」とは、皮膚表面あるいはその下の組織に異常な細胞の増殖が起こり、腫瘍として目に見える形で現れるものを指します。腫瘍と聞くと「がん」を連想するかもしれませんが、多くの場合は良性腫瘍で、命に関わることはほとんどありません。しかし、腫瘍の種類によっては放置すると増大し、美容上の問題や痛み、他の合併症を引き起こすことがあるため、早めに医師の診察を受けることが望まれます。腫瘍には次のように良性と悪性があります。
- 良性腫瘍:通常、周囲の組織に浸潤することはなく、転移もしないため生命への危険はありません。代表的なものには粉瘤、脂肪腫、ほくろなどがあります。
- 性腫瘍:悪性黒色腫(メラノーマ)や皮膚がんのように、進行が早く、周囲の組織へ広がったり、血液やリンパを通じて転移したりするリスクがあります。
できものの重要な見分けポイント
- 短期間で急速に大きくなるか
- 表面が崩れて潰瘍化しているか
- 出血が持続するか
- 形状や色が不規則であるか
こうした特徴が見られる場合、悪性の可能性があるため迅速な診察が必要です。
できものの日帰り手術
日帰り手術(外来手術)とは、入院することなく、同じ日に手術を受けてその日のうちに帰宅できる治療方法です。局所麻酔や短時間で行える手術が対象となります。手術後の体調が安定していれば、通常は数時間の経過観察後に帰宅可能です。
当院では、さまざまな疾患・ケガの日帰り小手術に対応しています。お気軽にご相談ください。
日帰り手術が適用される疾患例
- 粉瘤(アテローム)
- 脂肪腫(リポーマ)
- ほくろの切除
- いぼの治療
- 皮膚の小さな切り傷や異物除去(外傷などの縫合処置)
日帰り手術のメリット
- 1. 入院が不要で患者の負担が少ない
一般的な手術と異なり、入院する必要がないため、患者の生活リズムに大きな影響を与えません。手術後は自宅でリラックスしながら回復できるのが大きな利点です。 - 2. 費用が安く抑えられる
入院費や長期間の医療費がかからないため、経済的な負担が軽減されます。特に保険適用される手術であれば、患者さんの負担額はさらに小さくなります。 - 3. 早期の社会復帰が可能
日常生活への復帰が早いため、仕事や家庭生活に与える影響を最小限に抑えることができます。手術後に医師から適切なアドバイスを受け、注意事項を守れば通常は翌日から軽い日常活動が可能です。 - 4. 手術が短時間で済む
局所麻酔や簡単な処置で行われることが多いため、手術時間は数十分から1時間程度が一般的です。術後の経過観察も短時間で済む場合が多く、その日のうちに帰宅できます。 - 5. 感染リスクが低い
病院に長期間滞在することがないため、院内感染や術後感染のリスクが低減されます。また、帰宅後は清潔な自宅で過ごせるため、環境要因による感染の可能性も少なくなります。 - 6. 精神的なストレスが少ない
入院による精神的な負担がないため、患者さんはリラックスした状態で手術に臨めます。日常的な生活に早く戻れることも安心感につながります。
日帰り手術の注意点
- 術後の管理が重要:自宅で過ごすため、医師からの指示に従い、術後のケア(消毒、薬の服用、安静など)をしっかり行う必要があります。
- 緊急時の対応:まれに術後に出血や感染の兆候が現れることがありますので、その場合はすぐにクリニックや病院に連絡し、適切な処置を受けることが大切です。
日帰り手術の流れ
1診察と検査
手術が必要か、どの方法が適切かを診断します。
2手術の説明
手術の手順、リスク、注意点について医師から説明させていただきます。
3手術当日
局所麻酔下で手術を実施し、術後は短期間の経過観察を行います。
4帰宅と術後管理
帰宅後は医師の指示に従い、適切な術後ケアを受けましょう。
粉瘤(アテローム)
粉瘤は皮膚の下にできる袋状の構造(嚢腫)が特徴です。この袋の中に皮脂や角質、垢(皮膚の老廃物)が溜まり、膨らんでしこりのように見えます。毛穴や皮脂腺の出口が塞がると、中にある老廃物が排出されず溜まり続けるため、徐々に大きくなります。
粉瘤ができやすい部位
背中、首、顔、胸、脇の下、陰部など皮脂腺が多い部位
粉瘤による症状と合併症
小さな段階では痛みを伴いませんが、内容物が溜まることで次第に膨らみ、押すと不快感を覚えることがあります。
また、粉瘤が赤く腫れて強い痛みを感じるようになり、膿がたまり、悪臭を伴うことがあります。この場合、自然に破れて膿が出ることもありますが、根本的な治療には切開や摘出が必要です。
粉瘤の診断方法
視診で粉瘤と診断することが多いですが、感染している場合や大きな腫瘍の場合は、エコー検査で内部構造を確認することがあります。
- 感染がない場合:袋ごと取り除く「嚢腫摘出術」を行います。局所麻酔をかけて切開し、内部の老廃物を除去した後、袋を完全に取り出すことで再発を防ぎます。
- 感染がある場合:まず膿を排出し、抗生剤で炎症を抑えてから切除を行います。
脂肪腫(リポーマ)
脂肪腫は、皮下脂肪が異常に増殖し、塊となったものです。柔らかく弾力性があり、触れると滑らかに動く特徴があります。脂肪細胞が増殖しても腫瘍自体は皮膚の表面には現れず、皮膚の下にしこりとして感じられます。
脂肪種ができやすい部位
背中、首、肩、腕、大腿部など脂肪の多い部分に発生しやすいですが、体のどこにでもできる可能性があります。
- 腫瘍が小さい場合:ほとんど症状がなく、偶然触れて気づくことが多いです。
- 腫瘍が大きくなる場合:神経や血管を圧迫することで痛み、しびれ、違和感が生じることがあります。
脂肪種の診断方法
触診による診察が基本ですが、腫瘍が大きい場合や悪性の可能性が疑われる場合にはエコー検査やMRIで腫瘍の状態を詳しく調べます。
- 腫瘍が小さい場合:経過観察で問題ありません。
- 腫瘍が大きい場合:局所麻酔下で外科的に切除します。脂肪腫が完全に取り除かれれば、再発はほとんどありません。
ほくろ・いぼ
ほくろの種類と発生要因
ほくろは、皮膚の色素細胞(メラノサイト)が増殖してできる良性の皮膚病変です。遺伝的な要因や紫外線の影響によって数が増えたり、大きくなったりすることがあります。通常は良性ですが、短期間で大きくなる場合や形が不規則な場合は悪性黒色腫の疑いがあるため、医師の診断が必要です。
いぼの種類と発生要因
いぼは主にヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で、感染によって発生します。ウイルスに感染した皮膚が増殖し、硬い盛り上がりが見られます。
いぼの種類
- 尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい):手足に多く見られる一般的ないぼ
- 平疣贅(へんぺいゆうぜい):顔や首に小さく平らないぼができる
- 尖圭コンジローマ:陰部にできるいぼで、性感染症の一種
治療法の選択肢
- ほくろ:通常は切除術やレーザー治療を行いますが、悪性の可能性がある場合は病理検査も行います。
- いぼ:液体窒素による冷凍療法、電気焼灼、レーザー治療、抗ウイルス薬の外用などが選ばれます。
すり傷・切り傷・やけどなど
外傷の治療では、痛みが少なく傷が早く治る湿潤療法(モイストヒーリング: Moist Wound Healing)を積極的に用いています。湿潤療法は、傷口を乾燥させず、湿った環境を保ちながら治す治療法です。従来の「消毒して乾燥させる」方法とは異なり、湿潤環境を維持することで自然治癒力を最大限に引き出すことを目的とします。
傷の治癒が早い
湿った環境により細胞の増殖が促進され、通常の治療法よりも早く傷が治ります。特に、すり傷や軽いやけどでは回復が早いです。
痛みが少ない
傷口が乾燥しないため、かさぶたが形成されず、剥がれるときの痛みがありません。また、被覆材がクッションの役割を果たし、外部からの刺激による痛みも軽減されます。
傷跡がきれいに治る
かさぶたを作らないため、皮膚がスムーズに再生されることから、瘢痕(はんこん:傷跡)が目立ちにくいのが特徴です。特に美容面を重視する治療で有効です。
感染リスクが低い
傷口を被覆材で覆うため、細菌の侵入を防ぐことができ、感染リスクが低下します。また、浸出液が過剰にならないよう適切に吸収するため、細菌が繁殖しにくい環境が保たれます
このように、傷の治癒を早め、痛みを軽減し、きれいに治すことが可能とされ、多くの外科・皮膚科で採用されています。
すり傷・切り傷
湿潤療法は小さな擦り傷や切り傷に対しても効果があり、痛みが少なく早く治ります。 軽度のすり傷は皮膚表面のみの損傷で、適切な消毒と被覆によって自然に治癒します。広範囲の場合、細菌感染を防ぐために抗生剤を用いることもあります。 鋭いものによってできた切り傷は深さによって治療が異なり、深い場合には縫合が必要です。神経や血管を損傷している可能性があるため、注意が必要です。
やけど
- 軽度(I度):表皮の損傷。赤みと痛みを伴いますが、比較的早く治ります。
- 中等度(II度):水ぶくれが発生し、痛みが強くなります。
- 重度(III度):皮膚の深部まで損傷し、皮膚移植が必要になることもあります。
湿潤療法は特に水ぶくれを伴う軽中度のやけどに有効で、感染予防とともに痛みを抑えます。
日帰り手術の費用について
費用には、診察料、麻酔料、手術料、薬剤費、病理検査費用が含まれる場合があります。また、手術後の経過観察や抜糸にかかる費用も考慮する必要があります。
※保険適用外の治療や美容目的の場合は高額になるため、事前にご相談ください。