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生活習慣病

生活習慣病とは

生活習慣病とは、毎日の生活習慣が原因となり、長期間にわたって進行する病気を指します。食生活、運動不足、睡眠、喫煙、飲酒などの生活習慣が影響し、早期にはほとんど症状がないため放置されがちですが、進行すると重大な病気を引き起こす可能性があります。主な生活習慣病には、動脈硬化、高血圧、糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドローム、痛風があります。それぞれの病気について簡単に解説します。

動脈硬化(どうみゃくこうか)

動脈硬化は、血管が硬くなり弾力を失い、血液の流れが悪くなる病気です。原因は血管内にコレステロールが蓄積することで、特に悪玉コレステロール(LDL)の増加が影響します。コレステロールが血管内で塊(プラーク)を作ると血管が狭くなり、血液が十分に行き渡らなくなります。プラークが破裂すると血栓ができ、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすことがあります。

高脂肪の食事、喫煙、運動不足、糖尿病が主なリスクです。動脈硬化を防ぐためには、悪玉コレステロールの低下を目指した食事や適切な運動が必要で、場合によっては薬物療法も用いられます。

動脈硬化の診断基準

動脈硬化自体には特定の診断基準があるわけではありませんが、動脈硬化の進行度やリスクを評価するためには以下の検査が行われます。

  • 血液検査:LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、血糖値を測定し、動脈硬化リスクを判定します。
  • 頸動脈超音波検査:頸動脈の血管壁の厚さ(IMT)を測定し、プラークの有無を確認します。
  • ABI検査(足関節上腕血圧比):下肢の動脈硬化を調べるため、腕と足の血圧比を測定します。
  • 冠動脈CT:冠動脈の石灰化(カルシウム沈着)を評価し、狭窄の程度を確認します。

高血圧

高血圧は、血液が血管を通る際の圧力が高くなりすぎる状態で、特に自覚症状がないため発見が遅れやすい病気です。血圧が慢性的に高いと心臓や血管に大きな負担がかかり、心筋梗塞、脳出血、腎不全などのリスクが高まります。

塩分の過剰摂取が血圧を上昇させる主な原因であり、ストレスや肥満も悪化要因となります。治療には減塩、適度な運動、ストレス管理が効果的です。進行した場合は降圧薬の使用も検討されます。

高血圧の診断基準

(日本高血圧学会ガイドラインに基づく)

  • 収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上
  • 拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上

上記いずれかに該当すると高血圧と診断されます。

家庭での血圧測定も重要視されており、家庭血圧の場合は135/85mmHg以上が基準です。複数回の測定で平均値を算出して診断します。

糖尿病

糖尿病は、血液中の糖分(血糖値)が慢性的に高い状態が続く病気で、放置するとさまざまな合併症を引き起こします。インスリンの分泌不足や作用不全が原因で、体内で糖を適切にエネルギーとして利用できなくなります。

初期にはのどの渇きや頻尿がみられますが、進行すると失明(糖尿病網膜症)、腎不全、神経障害など深刻な状態に陥ります。治療には、食事療法、運動療法、薬物療法があり、血糖値の適切な管理が重要です。

糖尿病の診断基準

(日本糖尿病学会に基づく)

以下のいずれかに該当すると糖尿病と診断されます。

  • 空腹時血糖値:126 mg/dL以上
  • 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間後の血糖値:200 mg/dL以上
  • 随時血糖値:200 mg/dL以上
  • HbA1c(過去1〜2か月間の平均血糖値を反映):6.5%以上

診断には、血糖値の測定を2回以上行い、安定して基準値を上回っているかを確認します。

脂質異常症(ししついじょうしょう)

脂質異常症は、血液中のコレステロールや中性脂肪のバランスが崩れた状態で、動脈硬化の進行を加速させます。特に悪玉コレステロール(LDL)の増加は血管内にコレステロールを蓄積させ、血管の狭窄や閉塞を招きます。一方、善玉コレステロール(HDL)が少ないと血管の掃除機能が低下します。原因は脂肪分の多い食事、運動不足、遺伝などです。治療には、スタチン系薬の使用や食生活の改善が効果的です。

脂質異常症の診断基準

(日本動脈硬化学会に基づく)

以下のいずれかに該当すると脂質異常症と診断されます。

  • LDLコレステロール:140 mg/dL以上(悪玉コレステロール)
  • HDLコレステロール:40 mg/dL未満(善玉コレステロール不足)
  • 中性脂肪:150 mg/dL以上

血液検査によって測定され、複数回のデータを基に総合的に判断します。

メタボリックシンドローム

内臓脂肪が蓄積し、高血圧、高血糖、脂質異常が複合的に絡み合った状態がメタボリックシンドロームです。この状態では心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高くなります。内臓脂肪から分泌される炎症物質が血管を傷つけ、動脈硬化の進行を促します。

診断は腹囲測定や血液検査で行われます。治療は内臓脂肪を減らすための食事療法と有酸素運動が基本で、場合によっては医師による薬物療法も必要です。

メタボリックシンドロームの診断基準

(日本内科学会に基づく)

必須項目と選択項目があり、以下をすべて満たすと診断されます。

【必須項目】

  • ウエスト周囲径(内臓脂肪の蓄積)
    ・男性:85cm以上
    ・女性:90cm以上

選択項目(以下のうち2つ以上)

  • 空腹時血糖値:110 mg/dL以上
  • 血圧:収縮期130 mmHg以上または拡張期85 mmHg以上
  • 中性脂肪:150 mg/dL以上、またはHDLコレステロールが40 mg/dL未満

この診断は腹囲の測定と血液検査、血圧測定によって行います。

痛風(つうふう)

痛風は、血液中の尿酸が高い状態(高尿酸血症)が続き、関節内に尿酸の結晶がたまることで炎症を引き起こします。最も一般的な症状は、足の親指の付け根に突然生じる激しい痛みです。

尿酸値が高くなる原因として、プリン体を多く含む食事(レバー、魚卵など)、アルコール摂取、肥満が挙げられます。放置すると腎臓にも影響を与え、腎不全のリスクが高まります。治療は食事制限、水分補給、尿酸降下薬(アロプリノールなど)を用いて尿酸値を適切に管理することが必要です。

痛風の診断基準

(日本痛風・尿酸核酸学会に基づく)

  • 血清尿酸値が7.0 mg/dL以上で高尿酸血症と診断されます。
  • 高尿酸血症の状態に加え、関節に痛風発作(急性関節炎)が起こると痛風と診断されます。
  • 発作時には関節液中に尿酸塩結晶が確認されることがあります。
  • 慢性化すると尿酸結石や腎機能障害を伴うため、腎機能の検査も併用されます。

生活習慣病は症状が出ないうちから、早めに予防することが大切です。バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、禁煙、節酒を心がけることで、多くの病気を未然に防ぐことができます。また、定期的な健康診断で自分の健康状態を知ることも重要です。生活習慣病を予防することで、健康寿命を延ばし、快適な生活を送ることができるでしょう。

生活習慣病の治療

生活習慣病の治療は、生活習慣の改善を基本としつつ、必要に応じて薬物療法や専門医による治療を組み合わせて行います。それぞれの病気の進行具合や個々の体調に応じて治療方法が異なるため、医師の指導に従って治療を続けることが大切です。

生活習慣の改善

根本治療の第一歩となるのが、生活習慣の改善です。生活習慣病の多くは、日々の生活を見直すことで病気の進行を抑えたり、症状を改善できる可能性があります。

下記で詳しく解説します。

生活習慣病の予防と対策

薬物療法

生活習慣病の進行が進んでいる場合や、生活改善だけではコントロールできない場合に薬が用いられます。

  • 高血圧の治療薬
    ・降圧薬(カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARBなど)を使用して血圧を適切に下げ、心臓や血管への負担を軽減します。
  • 脂質異常症の治療薬
    ・スタチン(悪玉コレステロールを下げる薬)やフィブラート(中性脂肪を下げる薬)が使用されます。
    ・特に動脈硬化のリスクが高い場合には早期からの投薬が重要です。
  • 糖尿病の治療薬
    ・インスリン分泌を促す薬(SU薬、GLP-1受容体作動薬)や、インスリンの感受性を高める薬(メトホルミン)がよく使われます。
    ・重症の場合はインスリン注射が必要になることもあります。
  • 痛風の治療薬
    ・血液中の尿酸値を下げる薬(アロプリノール、フェブキソスタット)を使用し、痛風発作の予防を行います。

合併症の予防と管理

生活習慣病は、心臓病や脳卒中、腎不全などの重大な合併症を引き起こすことがあります。そのため、早い段階から合併症のリスクを抑えるための治療が必要です。

  • 動脈硬化の進行予防
    血圧や脂質異常、血糖値をコントロールすることで動脈硬化の進行を抑えます。
  • 腎臓への影響を防ぐ
    高血圧や糖尿病が原因で腎機能が低下することがあるため、定期的に尿検査や血液検査を行い、腎機能を監視します。
  • 心臓病の予防
    狭心症や心筋梗塞のリスクを減らすために、生活習慣の改善とともに、必要であればアスピリンなどの血液をサラサラにする薬を使用します。

定期的な診察とモニタリング

生活習慣病は、進行状況を常に把握しながら治療する必要があります。そのため、定期的に医師による診察や検査を受けることが重要です。

  • 血液検査:血糖値、コレステロール値、尿酸値などを定期的に測定し、薬の効果や生活改善の効果を確認します。
  • 血圧測定:家庭でも定期的に血圧を測ることで異常を早期に発見できます。
  • 心電図や動脈硬化検査:動脈硬化の進行度を評価し、治療方針の見直しに役立ちます。

進行した生活習慣病や合併症を伴う場合、専門医の診察を受けることで適切な治療が受けられます。

生活習慣病の治療は、単に薬を飲むだけではなく、生活習慣を根本から見直すことが重要なポイントです。また、進行度や合併症の有無に応じて適切な薬物療法や専門医の診察を受けることが必要です。定期的に体の状態を確認しながら治療を続けることで、病気の進行を抑え、健康な生活を長く保つことができます。

生活習慣病の予防と対策

生活習慣病の改善、または予防と対策には、日々の生活習慣の見直しと改善が大きなカギとなります。ここでは、具体的なポイントをわかりやすく説明します。

  1. バランスの良い食事
    食事は生活習慣病の予防において最も重要な要素の一つです。ポイントは「適切な量、栄養バランス、質の良い食材を選ぶ」ことです。
    •野菜中心の食生活:食物繊維を含む野菜や果物を毎食摂取し、血糖値やコレステロールの上昇を抑えます。
    •塩分の制限:高血圧の予防のために、1日あたりの塩分摂取量を6g未満に抑えるのが理想です。
    •適切な脂質管理:魚(オメガ3脂肪酸)やオリーブオイルを積極的に取り入れ、悪玉コレステロールを抑制します。
    •糖質をコントロール:急激な血糖値の上昇を防ぐために、精製された炭水化物(白米、白パン、砂糖)の摂取を控えます。
  2. 適度な運動
    運動は肥満解消だけでなく、血圧、血糖値、脂質のバランスを整える効果があります。
    •有酸素運動:ウォーキング、ジョギング、水泳などを週150分以上(1日30分程度)行うことが推奨されます。脂肪を燃焼し、動脈硬化を防ぎます。
    •筋力トレーニング:筋肉量を増やすと基礎代謝が上がり、肥満予防やインスリン抵抗性の改善に役立ちます。
    •ストレッチや体操:関節の可動域を広げ、血行を促進するために取り入れると効果的です。
  3. 禁煙と節酒
    •禁煙:タバコは血管を傷つけ、動脈硬化や心筋梗塞を引き起こすリスクを高めます。完全に禁煙するのが理想です。
    •節酒:過度なアルコール摂取は肥満、肝機能障害、血圧上昇を引き起こします。1日のアルコール量をビールであれば中瓶1本程度(500ml)に抑えることが推奨されます。
  4. 十分な睡眠とストレス管理
    •睡眠の質を高める:6~8時間の良質な睡眠を確保することでホルモンバランスが整い、食欲や血糖値のコントロールがスムーズになります。
    •ストレスを溜めない:慢性的なストレスは自律神経を乱し、血圧や血糖値を悪化させます。リラックスできる時間を持ち、趣味や適度な休息を心がけましょう。
  5. 定期的な健康診断
    生活習慣病は初期段階では症状がほとんどありません。そのため、定期的な健康診断で血圧、血糖値、コレステロール値、尿酸値などを把握することが重要です。
    •年1回の健康診断:異常が見つかれば早期治療が可能です。
    •血液検査や心電図検査:動脈硬化や高血圧のリスクを早めに見つけるために有効です。
  6. 体重管理(肥満予防)
    メタボリックシンドロームや糖尿病の予防には、適正体重を維持することが大切です。
    •BMIの維持:BMI(体格指数)を22前後に保つことが理想です。
    •内臓脂肪の減少:お腹周りの脂肪は動脈硬化のリスクを高めるため、適切な運動や食事制限で減らす必要があります。
  7. 継続的な生活習慣の見直し
    一時的なダイエットや運動ではなく、無理のない範囲で続けられる習慣を作ることがポイントです。
    •小さな目標を立てる:いきなり大きな変化を求めず、「1日10分歩く」「塩分を1日1g減らす」など小さな目標から始めると効果的です。
    •家族や友人と一緒に実施:周囲のサポートがあると継続しやすくなります。

生活習慣病は、日々の小さな積み重ねで予防が可能です。特に、食事と運動、禁煙・節酒、ストレス管理が柱となります。早めに対策を講じることで、健康寿命を延ばし、将来の大きな病気を防ぐことができます。自分に合った方法を見つけ、無理せず続けることが大切です。